やけど(熱傷)
やけどとは
やけどとは、熱によって皮膚や粘膜が損傷を受けることです。医学用語では「熱傷(ねっしょう)」と呼ばれます。熱いお湯や油、ストーブ、アイロン、たばこの火、電気、化学物質など、様々な原因で発生します。皮膚の損傷の深さによって症状が異なり、適切な処置を行わないと、感染症や瘢痕(傷跡)が残る可能性があるため、早期の対応が重要です。
やけどの種類と症状
やけどは、皮膚のどの深さまで損傷が及んだかによって、I度、II度(浅達性・深達性)、III度の3段階に分類されます。
・I度熱傷
皮膚の表面(表皮)のみの損傷です。数日で跡を残さずに治ることがほとんどです。
症状:皮膚が赤くなり、水ぶくれはできません。
痛み:ヒリヒリとした痛みがあります
例) 日焼けによる軽度のやけどなど。
・II度熱傷
・浅達性II度熱傷:
真皮の比較的浅い部分までの損傷です。通常、数週間で治癒し、軽度の色素沈着が残ることはありますが、瘢痕はほとんど残りません。
症状:赤みと水ぶくれができます。水ぶくれを破ると、ジュクジュクとした赤い皮膚が見えます。
痛み:強い痛みがあります
・深達性II度熱傷:
真皮の深い部分まで損傷が及んだ状態です。治癒には時間がかかり、瘢痕やひきつれ(瘢痕拘縮)が残る可能性があります。
症状:水ぶくれができ、皮膚は白色やまだら状の赤色に見えることがあります。
痛み:神経が損傷しているため、浅達性II度熱傷よりも鈍い、あるいはほとんど感じない場合もあります。
・Ⅲ度熱傷
皮膚の全層(表皮、真皮、皮下組織)にわたる最も重度の損傷です。
自然治癒は期待できず、皮膚移植などの外科的治療が必要となることが多いです。治癒後には必ず瘢痕が残ります。
症状: 皮膚は白色、褐色、または黒色に変色し、乾燥して硬くなります
痛み:神経や血管も破壊されるため、痛みを感じないことがほとんどです。

やけどの応急処置
やけどを負った際に最も重要な応急処置は、「流水による冷却」です。
1. すぐに冷やす: やけどを負ったら、すぐに流水(水道水など)で最低5分以上、患部をしっかりと冷やしてください。
アイスノンでの冷却は凍傷のリスクがあり、かえって傷が深くなる可能性があるのでさけましょう!
冷やすことで熱が皮膚の奥に広がるのを防ぎ、痛みや炎症を和らげます。
衣類の上からやけどをした場合は、脱がずに衣類の上から冷やしてください。
2. 清潔に保つ: 冷やした後は、清潔なガーゼや布で患部を覆い、保護してください。
3. 水ぶくれはつぶさない: 水ぶくれは、皮膚を保護し、細菌感染を防ぐ役割があります。数日間は、無理につぶさないようにしましょう。
4. すぐに受診する: 広範囲のやけど、I度以外のやけど、顔や関節などの重要な部位のやけど、乳幼児や高齢者のやけどの場合は、受診してください。

当院でのやけどの治療
当院では、やけどの深さや範囲、発生部位などを総合的に判断し、患者様一人ひとりに最適な治療を行います。
・薬剤: 炎症を抑える軟膏や、細菌感染を防ぐ抗生物質の外用薬などを使用します。
・水ぶくれの処置: 状況に応じて、清潔な環境下で水ぶくれを処置する場合があります。
・保護: 清潔なガーゼや被覆材を用いて、患部を保護し、感染を防ぎます。
・痛みの管理: 痛みが強い場合は、痛み止めを処方することもあります。
重度のやけどや広範囲のやけどで入院治療や手術が必要と判断される場合は、適切な専門医療機関へご紹介させていただきます。
ご家庭でのケア
やけどの治療中は、ご家庭でも以下の点に注意してケアを行ってください。
・患部を清潔に保つ: お風呂で患部を泡の石鹸で洗い、清潔に保ちましょう。
・処方された薬剤を使用する: 処方された軟膏や薬剤は、指示通りに塗布してください。
・患部を刺激しない: 衣服が擦れたり、触ったりしないように注意しましょう。
無理な運動を避ける: 無理な運動を避け、安静に保つことが重要です。
場所によっては、瘢痕拘縮のリスクがあるため、指を曲げる運動などを促すこともあります。
・異常があればすぐに受診: 痛みが増す、赤みや腫れが広がる、膿が出るなどの異常が見られた場合は、すぐに当院にご連絡ください。
よくある質問
Q. やけどの跡は残りますか?
やけどの深さによって異なります。I度熱傷はほとんど跡を残しませんが、II度熱傷(特に深達性)やIII度熱傷では、赤み、色素沈着、ひきつれ(瘢痕拘縮)、盛り上がった傷痕(肥厚性瘢痕やケロイド)が残る可能性があります。早期の適切な治療が、跡を軽減するために重要です。
Q. 水ぶくれはつぶした方がいいですか?
基本的にご自身で水ぶくれをつぶすのは避けてください。水ぶくれの中の液体は、やけどした皮膚を保護し、細菌感染を防ぐ役割があります。無理につぶすと、感染のリスクが高まります。もし水ぶくれが大きくて日常生活に支障がある場合や、自然に破れてしまった場合は、清潔な処置が必要ですので当院にご相談ください。
Q. 冷やすのはどれくらいの時間ですか?
目安として、水道水などの流水で5分以上、患部をしっかりと冷やしてください。痛みが和らぐまで続けるのが良いでしょう。ただし、広範囲のやけどや乳幼児の場合は、冷やしすぎによる低体温に注意が必要です。アイスノンでの冷却は凍傷のリスクがあるので、避けましょう。
Q. やけどをした部分が黒くなっています。大丈夫でしょうか?
やけどをした部分が黒くなっている場合は、III度熱傷の可能性が高いです。これは皮膚の深い部分まで損傷が及んでいる状態であり、非常に重度なやけどです。神経も破壊されているため、痛みを感じないこともあります。自然治癒は期待できず、感染のリスクも高いため、すぐに医療機関を受診してください。
Q. 子どもがやけどをしてしまいました。すぐに受診すべきですか?
お子様のやけどは、大人よりも重症化しやすいため、すぐに医療機関を受診してください。特に、広範囲のやけど、顔や手、足、股など関節に近い部位のやけど、水ぶくれができたやけどの場合は、緊急性が高いです。まずは流水でしっかりと冷やし、その後速やかに当院にご連絡いただくか、救急外来を受診してください。
