岩倉きぼうクリニック

乾癬(かんせん)

乾癬(かんせん)

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院長から乾癬でお悩みの方へ

皮膚の赤みや白いかさぶた、かゆみや痛み。もしあなたが乾癬の症状に悩んでいるなら、そのつらさは計り知れないでしょう。乾癬は人にうつる病気ではありませんが、見た目の問題だけでなく、日常生活の質を大きく低下させます。

近年では、関節炎が合併するほか、うつ病などの精神疾患との関連も指摘されており、単なる皮膚病ではない全身性の炎症性疾患であることが分かってきています。乾癬は塗り薬だけでなく、内服薬や光線治療、生物学的剤とよばれる高額な薬剤まで豊富な治療選択肢があります。
重症度やライフスタイルを考慮し、治療を選択する必要があります。
私は、大学病院や総合病院勤務に、多くの乾癬の患者様を診察してきました。その経験を活かし、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療法をご提案します。
岩倉市はもちろん、北名古屋市、小牧市、一宮市、江南市にお住まいで、乾癬にお悩みの方は、当院にご相談ください。

乾癬とは?知っておきたい5つの種類と症状

乾癬とは?知っておきたい5つの種類と症状

乾癬は、皮膚に赤みのある発疹や白いかさぶた(鱗屑)が現れる慢性的な皮膚の病気です。この病気は見た目の症状が気になるだけでなく、かゆみや痛みが日常生活の質を大きく低下させることもあります。多くの方が「人にうつるのではないか」と心配されますが、乾癬は感染症ではありません。ご安心ください。適切な診断と治療を受けることで、症状を効果的にコントロールし、これまで通りの快適な生活を送ることが十分に可能です。ご自身の乾癬がどのタイプに当てはまるのか、そしてどのような治療法があるのかを理解することは、病気と前向きに向き合うための大切な第一歩となります。

乾癬と健常者の皮膚の違い

代表的な5つの乾癬の種類と特徴

乾癬にはいくつかのタイプがあり、それぞれ症状の現れ方や好発部位に特徴が見られます。ご自身の乾癬がどのタイプに該当するかを知ることは、最適な治療法を選択する上で非常に重要です。皮膚科専門医として、患者さんの症状を詳しく診察し、適切な診断に努めています。

種類 特徴と症状
尋常性乾癬
関節症性乾癬
膿疱性乾癬
滴状乾癬
紅皮症性乾癬

乾癬に現れる主な皮膚症状と体への影響

乾癬の症状は主に皮膚に現れますが、その影響は皮膚にとどまらず、全身の健康に及ぶこともあります。乾癬に特徴的な症状としては、主に次の5つが挙げられます。

  • 紅斑(こうはん)
    • 皮膚が赤くなる症状です。
    • 炎症によって毛細血管が拡張し、赤みとして現れます。
    • 乾癬の紅斑は境界がはっきりしており、皮膚が盛り上がっていることが特徴です。
  • 浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)
    • 皮膚が厚く硬くなる症状です。
    • これは皮膚の細胞が異常に増殖することによって起こります。
    • 触るとゴワゴワとした感触があり、病変部の厚みが増している状態です。
  • 鱗屑(りんせつ)
    • 銀白色のフケのようなかさぶたです。
    • 厚くなった皮膚の表面の角質が異常な速さで剥がれ落ちるものです。
    • 乾癬の患者さんにとって、この鱗屑が周囲の視線を気にさせる大きな原因の一つとなることがあります。
  • 落屑(らくせつ)
    • 鱗屑が剥がれ落ちる現象を指します。
    • 衣服に付着したり、床に落ちたりするため、日常生活で気になることが多い症状です。
    • 多くの患者さんが、この症状による精神的な負担を訴えられます。
  • かゆみ
    • 個人差はありますが、多くの乾癬患者さんがかゆみを訴えます。
    • かゆみが強いと夜間に眠れなくなったり、集中力が低下したりするなど、生活の質に大きく影響します。
    • かきむしることで症状が悪化し、さらにかゆみが強くなる悪循環に陥ることもあります。

これらの皮膚症状は、見た目の問題だけでなく、かゆみや痛みが睡眠障害を引き起こしたり、社会生活や精神的なストレスにつながったりすることもあります。また、乾癬は爪にも症状が現れることがあり、爪が変形したり、厚くなったり、変色したりすることがあります。頭皮に症状が現れることも非常に多く、フケがひどくなったり、かゆみが強くなったりして、日常生活の大きな悩みの種となる場合があります。乾癬性関節炎のように、皮膚以外の関節にも炎症が広がることもあり、全身の健康状態にも注意を払う必要があるのです。

乾癬の症状

乾癬が発症する原因とメカニズム

乾癬は、現代の医学をもってしてもまだ原因が完全に解明されていない病気です。しかし、遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に絡み合い、免疫システムの異常によって発症すると考えられています。乾癬の主な発症メカニズムは以下の通りです。

  1. 免疫システムの異常
    • 通常、外部からの異物から体を守る免疫システムが、乾癬では誤って自身の皮膚細胞を攻撃してしまいます。
    • 特に、T細胞と呼ばれる免疫細胞が過剰に活性化し、炎症を引き起こすサイトカイン(細胞間の情報伝達を担うタンパク質)を大量に放出します。
  2. 皮膚細胞の異常な増殖
    • サイトカインの刺激を受けることで、皮膚の表皮細胞(角化細胞:皮膚の一番外側の層を構成する細胞)が異常な速さで増殖・分化します。
    • 通常の皮膚細胞のターンオーバー(生まれ変わり)は約28日周期ですが、乾癬では約3~4日と極端に短くなります。
    • これにより、未熟な細胞がどんどん表面に押し上げられ、厚い皮膚病変や鱗屑を形成します。
  3. 炎症反応
    • T細胞やサイトカインの活動により、皮膚に慢性的な炎症が起こります。
    • これが紅斑や浸潤・肥厚の原因となります。

このように、乾癬は単なる皮膚の病気ではなく、免疫システムが関わる全身性の炎症性疾患であると考えられています。近年では、乾癬のような炎症性皮膚疾患が、心身の健康に深く影響することが明らかになっています。炎症を引き起こすサイトカインは、皮膚だけでなく脳にも作用し、うつ症状を引き起こす可能性があることが研究で示されています。さらに、皮膚の炎症とうつ病の両方に関与するサイトカインが存在し、乾癬が全身性の炎症性疾患であるだけでなく、精神的な健康にも深く関わることを示唆しているのです。ストレス、肥満、喫煙、飲酒、特定の薬剤などが、乾癬の症状を悪化させる環境要因として知られています。

乾癬の治療法

乾癬の治療は、一人ひとりの症状の重さ、患者さんの生活スタイル、そして治療に対するご希望によって多岐にわたります。私たちは、患者さんが症状の改善を実感し、充実した日常生活を送るためのサポートを重視しています。乾癬は、一度症状が改善しても再発を繰り返すことがあるため、長期的な視点での病状コントロールが非常に大切です。ご自身に最も適した治療法を理解し、主体的に治療に参加していくことが、生活の質を高めるための重要な一歩となります。

乾癬治療の、順番

外用薬・光線療法・内服薬:基本的な治療の選択肢

乾癬の治療は、病状の段階や患者さんの状態に応じて、主に「外用薬(塗り薬)」「光線療法」「内服薬(飲み薬)」の3つを組み合わせて進められます。これらは、軽症から中等症の乾癬に対する基本的な治療の選択肢となります。治療の順番は上記のような、乾癬の治療ピラミッドであらわされます。

1. 外用薬(塗り薬):局所の炎症を抑え、皮膚の生まれ変わりを正常に導く

外用薬は、皮膚に直接塗布することで炎症を抑えたり、皮膚細胞の異常な増殖を抑制したりする治療法です。特に軽症の乾癬や、他の治療と併用する場合に有効です。

  • ステロイド外用薬
    • 皮膚の炎症を強力に抑える作用があります。
    • 様々な強さの製剤があり、症状の程度や病変がある部位に合わせて使い分けます。
    • 長期にわたって使用すると、皮膚が薄くなるなどの副作用が生じる可能性もあるため、医師の指示に従い、適切に使用することが大切です。
  • 活性型ビタミンD3外用薬
    • 皮膚細胞の異常な増殖を抑え、細胞が正常な状態に成熟するよう促します。
    • ステロイド外用薬と併用することで、より高い治療効果が期待できます。
    • 比較的安全性が高いとされています。
  • AhR作動薬(ブイタマー軟膏®)
    • 皮膚の細胞にある「芳香族炭化水素受容体(AhR)」を活性化させ、炎症を抑えつつ、皮膚のバリ ア機能を正常に整えるという新しい仕組みの薬です。
    • ステロイドでないのが、魅力的で、12歳以上から使用可能です。

乾癬では、皮膚の細胞が約3〜4日という異常な速さで生まれ変わってしまうことで、厚い鱗屑(りんせつ)が形成されます。これらの外用薬は、この異常なターンオーバー(細胞の生まれ変わり)を正常な状態に近づけることを目的としています。

乾癬の塗り薬のドボベットです
乾癬の塗り薬のマーデュオックスです
乾癬とアトピー性皮膚炎で用いるブイタマーです

2. 光線療法:特定の光の力で免疫を調整し、炎症を抑制

光線療法は、特定の波長の紫外線を皮膚に照射することで、皮膚の免疫反応を調整し、炎症を抑える治療法です。

  • エキシマライト療法
    • 特定の狭い波長域の308nmを照射します。
    • 治療効果が高く、比較的副作用が少ないため、広く用いられています。
    • 通常、週に1回程度の通院が必要となります。

光線療法は、皮膚のT細胞(免疫細胞の一種)の活動を抑え、炎症を引き起こす物質の産生を抑制することで、乾癬の症状を改善します。通院の手間はありますが、病変が限局している場合などに有効な選択肢です。

円形脱毛症の治療で使う二つ目の機械です。セラビーム(エキシマライト)の機械です。
円形脱毛症の治療に使う光線治療の機械です。セラビームミニ(エキシマライト)という機械です。

3. 内服薬(飲み薬):全身からのアプローチで症状をコントロール

外用薬や光線療法だけでは効果が不十分な場合や、病変が広範囲に及ぶ場合に、全身に作用する内服薬が検討されます。

  • レチノイド
    • ビタミンA誘導体の一種です。
    • 皮膚の異常な細胞増殖を抑える効果があります。
  • シクロスポリン
    • 免疫反応を強力に抑える作用があります。
    • 速やかに効果が現れることが多いですが、腎機能への影響などがあるため、定期的な血液検査で状態を確認しながら慎重に進めます。
  • アプレミラスト
    • 免疫細胞内の炎症性物質を調整する薬剤です。副作用が少なく、ご高齢の方も、長期的に使いやすいです。

内服薬は、全身から乾癬の病態にアプローチできるという利点がある一方で、全身への影響を考慮した丁寧な管理が求められます。患者さんの状態を詳しく診察し、副作用のリスクと効果のバランスを考慮しながら、最適な薬を選択します。

内服薬オテズラ®(アプレミラスト)

4. 劇的な改善も期待できる生物学的製剤とは

従来の治療法では十分な効果が得られなかった中等症から重症の乾癬患者さんにとって、生物学的製剤はまさに画期的な治療選択肢です。この治療法は、乾癬の発症に関わる特定の物質をピンポイントでブロックすることで、病気の根本的なメカニズムに作用し、劇的な改善が期待できます。

生物学的製剤の作用と特徴

  • 作用機序
    • 乾癬は、免疫システムのT細胞が過剰に活性化し、炎症を引き起こす「サイトカイン」(細胞間の情報伝達を担うタンパク質)を大量に放出することで発症すると考えられています。
    • 生物学的製剤は、この乾癬を引き起こす特定の炎症性物質(例えば、TNF-α、IL-17A、IL-23など)だけを狙い撃ちし、その働きを抑えます。
    • これにより、過剰な免疫反応を調整し、皮膚の炎症や異常な細胞増殖を抑制することができるのです。
  • 期待できる効果
    • 皮膚症状の顕著な改善はもちろんのこと、長年苦しんでいたかゆみや痛みの軽減、そして生活の質の向上が期待できます。
    • 特に尋常性乾癬においては、ほとんど症状のない状態(専門用語で「クリアスキン」と呼びます)にまで改善するケースも少なくありません。
  • 投与方法
    • 主に皮下注射、または点滴で投与されます。
    • 投与間隔は製剤によって異なり、数週間に一度から数ヶ月に一度まで様々です。
  • 対象となる患者さん
    • 外用薬や光線療法、既存の内服薬で十分な効果が得られない中等症から重症の乾癬、あるいは乾癬性関節炎の患者さんが主な対象となります。
  • 副作用
    • 免疫を抑える作用があるため、感染症(特に結核やB型肝炎)のリスクが通常の健康な方よりも高まる可能性があります。
    • そのため、投与前にはこれらの感染症に対するスクリーニング検査が必須となります。
  • 治療にかかる費用
    • 高額な薬剤ではありますが、公的医療保険が適用され、さらに「高額療養費制度」を利用することで、自己負担額を大幅に軽減することが可能です。

生物学的製剤による治療は、私たち皮膚科専門医が患者さんの状態を詳細に評価し、適切な製剤を慎重に選定することが非常に重要です。期待できる効果が大きい一方で、丁寧な説明と継続的な管理が不可欠な治療法です。
当院の院長は大学病院や、総合病院勤務時代に生物学的製剤の経験も多くあります。生物学的製剤が好ましいと判断した場合は、提携している総合病院へ紹介させていただきます。

乾癬の生物学的製剤

乾癬と似た他の皮膚疾患との見分け方

乾癬の症状は他のさまざまな皮膚疾患と似ているため、自己判断はせずに皮膚科専門医による正確な診断が不可欠です。ここでは、乾癬と間違いやすい代表的な皮膚疾患とその見分け方についてご紹介します。

  • アトピー性皮膚炎
    • 乾癬
      • 境界がはっきりした紅斑と銀白色の鱗屑が特徴です。
      • ひじ、ひざ、頭皮など、摩擦や刺激を受けやすい特定の部位にできやすいです。
      • 強いかゆみを伴うこともありますが、常にではありません。
    • アトピー性皮膚炎
      • 皮膚のバリア機能が低下し、乾燥と湿疹が特徴です。
      • かゆみが非常に強く、掻き壊しによる皮膚の肥厚が見られます。
      • 顔、首、関節の内側など、やわらかい皮膚の部位に出やすい傾向があります。
  • 湿疹(手湿疹、貨幣状湿疹など)
    • 乾癬
      • 特徴的な鱗屑を伴う紅斑です。
      • 手のひらや足の裏にできる場合は、膿疱性乾癬の可能性もあります。
    • 湿疹
      • 水ぶくれ(小水疱)、じゅくじゅくとしたただれ(びらん)、強いかゆみが特徴です。
      • 特定の刺激やアレルギー反応で発生することが多く、境界が不明瞭なことが多いです。
  • 脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)
    • 乾癬
      • 頭皮のフケや赤みは乾癬と似ていますが、乾癬のフケはより厚く、銀白色で境界がはっきりしています。
    • 脂漏性皮膚炎
      • 皮脂腺の多い頭皮、顔(鼻の周り、眉毛)、胸などに赤みや黄色っぽいフケ、脂っぽいかさぶたが現れます。
      • かゆみは比較的軽度であることが多いです。
  • 白癬(はくせん:水虫、たむし)
    • 乾癬
      • 爪の変形は乾癬性爪甲症(かんせんせいそうこうしょう)の場合があります。
      • 体幹にできる環状の病変も乾癬に似ることがあります。
    • 白癬
      • カビ(真菌)が原因の感染症です。
      • 顕微鏡検査で真菌を確認することで診断されます。
      • 症状は乾癬と似ることがありますが、通常は抗真菌薬が有効です。

これらの疾患との区別は、皮膚科専門医による詳細な視診(直接目で見る診察)や、必要に応じて組織検査(皮膚生検)を行うことで正確に行われます。自己判断せず、気になる症状がある場合は必ず専門医にご相談ください。

乾癬と鑑別すべき疾患

乾癬性関節炎など見落としやすい合併症の兆候

乾癬は単なる皮膚の病気ではなく、免疫システムが関わる全身性の炎症性疾患です。そのため、皮膚症状だけでなく、全身のさまざまな臓器に影響を及ぼすことがあります。特に注意すべきは「乾癬性関節炎」ですが、それ以外にも見落としやすい合併症がいくつか存在します。

  1. 乾癬性関節炎:関節の痛みや腫れに注意

乾癬性関節炎は、乾癬患者さんの約10〜30%に発症すると言われています。皮膚症状が出てから数年後に発症することが多いですが、皮膚症状よりも先に、あるいは同時に発症することもあります。

  • 関節の痛みや腫れ
    • 手足の指の関節、足首、膝、股関節、背骨など、全身の関節に起こり得ます。
    • 特に朝起きた時の関節のこわばりは、乾癬性関節炎に特徴的な症状の一つです。
  • 指趾炎(しえん)
    • 手や足の指全体がソーセージのように腫れてしまうことがあります。
  • 付着部炎(ふちゃくぶえん)
    • 腱が骨に付着する部分に炎症が起こる症状です。
    • アキレス腱の痛みなどが代表的な症状です。
  • 爪の変化
    • 爪が厚くなる、へこむ、剥がれるなど、乾癬特有の爪の病変を伴うこともよくあります。

乾癬性関節炎を放置すると、関節が破壊され、身体機能に永続的な障害を残す可能性もあるため、これらの兆候に早期に気づき、早期に治療を開始することが非常に重要です。皮膚症状だけでなく、関節の違和感にも注意を払うようにしてください。

  1. その他の合併症:全身の健康への影響

乾癬の患者さんは、以下のような病気を合併しやすいことが知られており、全身の健康管理が不可欠です。

  • 代謝症候群
    • 肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病などが合併しやすく、これらが組み合わさることで心臓や血管の病気(心血管疾患)のリスクが高まります。
  • 心血管疾患
    • 心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な病気のリスクが増加することが報告されています。
  • 精神疾患(うつ病など)
    • 最新の研究(Katamanin OMら, 2025)では、乾癬のような炎症性皮膚疾患の患者さんでは、うつ病の有病率が高いことが示されています。
    • これは、皮膚の炎症を引き起こす「炎症性サイトカイン」(細胞間の情報伝達を担うタンパク質)が、皮膚だけでなく脳にも作用し、脳の炎症を誘発することで、うつ症状につながる可能性があるためです。
    • 実際、皮膚の炎症と心の症状の両方に関連するサイトカインが存在し、乾癬が全身性の炎症性疾患であるだけでなく、精神的な健康にも深く関わることが分かってきています。
    • 炎症性サイトカインを標的とした抗炎症薬が、皮膚症状と精神症状の両方を軽減することが示された研究結果もあります。

気になる症状があれば、どんなことでもお気軽にご相談ください。

乾癬治療にかかる費用と医療費助成制度

乾癬治療は長期にわたることが多く、治療にかかる費用について不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ご安心ください。多くの治療法が健康保険の適用となり、高額な医療費に対する助成制度も利用することができます。

  1. 治療費の目安(保険適用)

自己負担割合が3割の場合の目安です。実際の費用は、年齢や所得に応じた自己負担割合(1割、2割、3割)によって異なります。

  • 外用薬
    • 薬剤の種類や処方量によって異なりますが、比較的安価です。
    • 目安としては、月に数千円程度となることが多いです。
  • 光線療法
    • 1回あたりの料金は数百円から千円程度です。
  • 内服薬
    • 薬剤の種類によって費用は大きく異なります。
    • 数千円から1万円を超えることもあります。
  • 生物学的製剤
    • 非常に高額な薬剤です。
    • 月に数万円から十数万円かかる場合があります。
    • ただし、後述の医療費助成制度が適用されることで、自己負担額を大幅に軽減することが可能です。
  1. 高額療養費制度:医療費負担を軽減する大切な制度

高額療養費制度は、1ヶ月間に医療機関や薬局に支払った自己負担額が、所得に応じた一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた分の金額が払い戻される制度です。

  • 対象
    • 全ての公的医療保険加入者が利用できます。
  • 申請方法
    • ご加入の健康保険組合や市町村の国民健康保険窓口に申請します。
    • 事前に「限度額適用認定証」を申請し、医療機関に提出することで、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることも可能です。

乾癬と上手に付き合うための生活習慣と心のケア

乾癬は、一度症状が現れると長くお付き合いいただく必要がある慢性的な皮膚の病気です。しかし、適切な治療を続けることと並行して、日々の生活習慣を見直すことは、症状のコントロールに繋がり、患者さんの生活の質(QOL:Quality Of Life、生活全体の豊かさ)を大きく向上させます。皮膚科専門医として、私たちは患者さんが皮膚の症状に一喜一憂するだけでなく、心の健康も大切にしながら、乾癬と前向きに付き合い、充実した毎日を送れるようサポートしたいと考えています。

掌蹠膿疱症・乾癬のストレスケア

乾癬の症状を悪化させないための生活習慣

乾癬の症状が悪化する要因は患者さんによって様々ですが、日々の生活習慣の中にも注意すべき点があります。これらを意識的に改善していくことは、症状の安定や軽減に繋がる大切なステップです。

  • ストレス管理
    • 精神的なストレスは、乾癬の症状を悪化させる大きな要因の一つです。
    • 忙しい現代社会ではストレスを完全にゼロにすることは難しいですが、上手に付き合う工夫が大切です。
    • 仕事や人間関係などで強いストレスを感じたら、ご自身に合ったストレス解消法を見つけることが重要です。
    • 例えば、趣味の時間を持ったり、軽い運動を取り入れたり、リラックスできる環境を整えたりするなど、積極的に心身を休ませる時間を作りましょう。
  • 十分な睡眠
    • 睡眠不足は体の免疫機能に影響を与え、皮膚の炎症を悪化させる可能性があります。
    • 規則正しい生活リズムを心がけ、質の良い睡眠を確保することが、体全体の回復力を高めることに繋がります。
    • 一日の疲れをしっかりと取ることで、心身のバランスが整いやすくなります。
  • 禁煙と節酒
    • 喫煙は乾癬の発症リスクを高め、既存の症状を悪化させることが多くの研究で指摘されています。
    • タバコに含まれる化学物質は、体内の炎症反応を促進すると考えられています。
    • また、過度な飲酒も乾癬の症状を悪化させたり、治療薬の効果に影響を与えたりすることがあります。
    • 乾癬の方は、脂肪肝の合併頻度が高いとも言われており、飲酒量は控えめにすることが賢明です。
  • 適正体重の維持
    • 肥満は乾癬の症状を悪化させ、治療薬の効果を低下させる可能性が示唆されています。
    • 脂肪組織からは炎症を促進する物質が放出されるため、肥満は乾癬の症状を悪化させやすいと考えられています。
    • バランスの取れた食事と適度な運動を組み合わせ、適正体重を維持することは、乾癬の管理において非常に重要です。
  • 皮膚への刺激を避ける
    • 衣服による摩擦や、掻きむしり、切り傷などの皮膚への外的な刺激は、その部分に新たな乾癬の病変を引き起こすことがあります。
    • これを「ケブナー現象」と呼び、乾癬患者さんによく見られる特徴です。
    • ゆったりとした締め付けの少ない衣類を選び、皮膚を優しく扱うように心がけましょう。
    • 特に、新しく乾癬ができやすい部位として、衣服で擦れる部分や、知らず知らずのうちに掻いてしまう部分が挙げられますので注意が必要です。

食事と栄養:乾癬に良い影響を与える食生活

乾癬の症状を根本的に治す「特効薬」となる食事は、現在のところ見つかっていません。しかし、体内の炎症を抑え、全身の健康を維持するためのバランスの取れた食生活は、乾癬の症状管理において非常に大切な役割を果たします。

  • バランスの取れた食事
    • 特定の食品に偏ることなく、主食、主菜、副菜を揃えた多様な食品から栄養を摂ることが基本です。
    • 旬の食材を積極的に取り入れることも、栄養バランスを保つ上で良い方法です。
  • 積極的に摂りたい食品
    • 青魚(サバ、イワシ、アジなど)
      • DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といったオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。
      • これらの脂肪酸は、体内で炎症を抑える働きが期待されています。
    • 野菜・果物
      • ビタミン、ミネラル、食物繊維、抗酸化物質が豊富で、体の免疫機能をサポートします。
      • 特に色の濃い野菜や季節の果物を意識して摂ることで、より多くの栄養を摂取できます。
    • 食物繊維
      • 腸内環境を整えることは、全身の免疫機能にも良い影響を与えます。
      • 玄米、雑穀、海藻、きのこ類などを積極的に取り入れると、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)を良好に保ちやすくなります。
  • 控えるべき食品
    • 飽和脂肪酸・トランス脂肪酸
      • 揚げ物、加工肉、スナック菓子、ファストフードなどに多く含まれるこれらの脂肪酸は、体内で炎症を促進する可能性があるため、摂取を控えめにすることが推奨されます。
    • 糖質の過剰摂取
      • 甘い飲み物や菓子類、白いパンなどの糖質を過剰に摂取することも、体内の炎症反応に影響を与える可能性があります。
      • 急激な血糖値の上昇は、体の炎症反応を悪化させる一因となることがあります。
    • 過度なアルコール摂取
      • アルコールは脂肪肝を悪化させる可能性があるため、適量を心がけるか、できるだけ控えることが望ましいです。

乾癬の症状を悪化させないための生活習慣

乾癬とうつ病の関係:ストレス管理と心のケアの重要性

乾癬は、皮膚に現れる症状だけでなく、かゆみや痛み、見た目への影響から、患者さんの精神的な負担が非常に大きくなりがちな病気です。そのため、うつ病や不安障害といった精神疾患を合併するケースが少なくありません。多くの患者さんが、「見た目の症状」が原因で社会生活や人間関係に悩んだり、外出をためらったりするといった精神的なつらさを抱えていらっしゃいます。

近年、多くの研究が示しているのは、乾癬のような炎症性皮膚疾患を持つ患者さんで、うつ病や不安症の有病率が高いという事実です。これは単なる心の弱さではなく、病気の生理学的な側面が関与している可能性が指摘されています。

  • 炎症性サイトカインと脳の炎症
    • 私たちの体内で炎症を引き起こす「炎症性サイトカイン」(細胞間の情報伝達を担うタンパク質のことです)が、皮膚だけでなく脳にも影響を及ぼし、脳内で炎症を引き起こすことでうつ症状に繋がる可能性がある、と指摘されています。
    • 皮膚で起きている乾癬の炎症と、心の症状であるうつ病には、共通のサイトカインが関与していることが分かってきています。
    • これは、乾癬が全身性の炎症性疾患であると同時に、精神的な健康にも深く関わっていることを示唆しているのです。
  • 抗炎症薬による効果
    • さらに、この炎症性サイトカインの働きを抑える治療薬(抗炎症薬)が、皮膚の症状を改善するだけでなく、うつ病の症状も同時に軽減する可能性があるという研究結果も出ています。
    • この発見は、乾癬の治療が皮膚症状だけに留まらず、精神症状の改善にも寄与し得ることを示唆しています。
  • 多角的なアプローチの重要性
    • このような背景から、乾癬の治療では、皮膚の症状を治すことと同時に、精神的な側面にも配慮した「多角的なアプローチ」が重要です。
    • 必要に応じて、心理療法や薬物療法など、精神科医や心療内科医の介入もお願いする場合があります。

もし、気分が落ち込む、意欲がわかない、眠れないといった精神的な症状が続く場合は、決して一人で抱え込まず、私たち皮膚科医だけでなく、心療内科や精神科といった専門医に相談することをためらわないでください。

乾癬の方は、しっかり睡眠をとることも大切です

自宅でできる効果的なスキンケア

乾癬の治療はクリニックでの薬物療法や光線療法が中心ですが、ご自宅での適切なスキンケアや紫外線対策も、症状の管理と生活の質向上に欠かせない要素です。これらを日々実践することで、治療効果を最大限に引き出し、より快適な生活を送ることができます。

  • 効果的なスキンケア
    • 保湿
      • 乾燥は乾癬の症状を悪化させる大きな要因の一つです。
      • 入浴後や乾燥を感じるときには、医師から処方された保湿剤や市販の低刺激性保湿剤を、乾燥しやすい部分だけでなく全身にたっぷりと塗布しましょう。
      • 保湿剤は、皮膚のバリア機能をサポートし、皮膚のうるおいを保つことでかゆみや落屑(らくせつ:皮膚が剥がれ落ちること)の軽減にも繋がります。
    • 入浴・洗浄
      • 湯温はぬるめに設定し、刺激の少ない石鹸を使い、泡で優しく洗いましょう。
      • 乾癬にはケブネル現象があります。症状のない健常な皮膚に、物理的な刺激が加わることで、その部位に新たな乾癬の皮疹が誘発される現象です。ですので、ナイロンタオルなどでゴシゴシ擦ることは絶対に避けてください。
      • 皮膚を傷つけないよう、手のひらで泡を転がすように洗うのが理想的です。
    • 清潔保持
      • 皮膚を清潔に保つことは、感染症予防にも繋がります。
      • しかし、過度な洗浄は皮膚のバリア機能を損ねる可能性があるので、適度な洗浄を心がけましょう。

使用するスキンケア製品は、低刺激性で無香料のものを選ぶのがおすすめです。もし使用中に皮膚トラブルを感じたら、すぐに使用を中止し、当院にご相談ください。

患者会や相談窓口の活用でQOL向上

乾癬は長期にわたる治療が必要な慢性疾患であり、治療を続ける中で不安や悩みを抱えることも少なくありません。そうしたときには、患者会や相談窓口の活用が、精神的な支えとなり、患者さんの生活の質(QOL)向上に大きく貢献します。一人で抱え込まず、様々なサポートを活用することで、病気との向き合い方が大きく変わることもあります。

  • 患者会の活用
    • 乾癬の患者会では、同じ病気を持つ方々が情報交換をしたり、悩みを共有したりすることで、一人ではないと感じられる心強い場所を提供しています。
    • 他の患者さんの体験談を聞くことで、新たな気づきや解決策が見つかることもありますし、病気に対する理解を深める良い機会にもなります。
    • 治療の選択肢や生活上の工夫など、実体験に基づいた情報は、日々の生活を送る上で非常に役立つことがあります。
    • 愛知県には、「あいち乾癬患者友の会(あいかん友の会)」があります。

まとめ

乾癬は、皮膚に赤みや白いかさぶたが現れる慢性的な病気で、いくつかの種類がありますが、人にうつる心配はありません。見た目の症状だけでなく、関節炎やうつ病などの合併症にもつながることがあり、全身の健康に注意が必要です。しかし、外用薬、光線療法、内服薬、そして画期的な生物学的製剤まで、多様な治療法が進化しています。ご自身の乾癬の種類を理解し、症状やライフスタイルに合った治療を選ぶことで、症状を効果的にコントロールし、これまで通りの快適な生活を送ることが十分に可能です。日々の生活習慣の見直しや心のケアも大切です。

当院は、岩倉市をはじめ、北名古屋市、小牧市、一宮市、江南市など近隣にお住まいの方々にもご来院いただきやすい皮膚科専門クリニックです。皮膚科専門医として、患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案し、長期的な視点でサポートいたします。もし現在、乾癬でお悩みの方は、どうぞお気軽に当院までご相談ください。岩倉駅から徒歩圏内とアクセスも良好ですので、どうぞご来院ください。

乾癬に関するQ&A

Q.  乾癬は完治しますか?

乾癬になりやすい体質そのものを変えることはできませんが、適切な治療と日常生活での工夫により、ほとんど症状のない状態を長期間保つことが可能です。当院では、患者様が快適な生活を送れるようサポートいたします。

Q. 乾癬は遺伝しますか?

乾癬は遺伝的な要因が関与することもありますが、必ずしも親から子へ遺伝するわけではありません。遺伝的素因を持つ人が、何らかのきっかけで発症すると考えられています。

Q. 乾癬治療中に注意すべきことはありますか?

風邪や扁桃腺炎などの感染症が悪化の引き金になることがあるため、体調管理にも注意してください。

参考文献

  1. Katamanin OM, Tan IJ, Barry J, Jafferany M. Role of Inflammation and Cytokine Dysregulation in Depression in Patients with Inflammatory Skin Conditions. American journal of clinical dermatology 26, no. 1 (2025): 35-43.

追加情報

[title]: Role of Inflammation and Cytokine Dysregulation in Depression in Patients with Inflammatory Skin Conditions.

炎症性皮膚疾患患者におけるうつ病における炎症とサイトカイン調節不全の役割 【要約】

  • 炎症性皮膚疾患(乾癬、アトピー性皮膚炎、hidradenitis suppurativa)患者において、うつ病の有病率が高いことが示されている。
  • 炎症性皮膚疾患における炎症性サイトカインは、脳の炎症を引き起こし、うつ症状につながる可能性がある。
  • 皮膚の炎症と鬱病の両方に関連するサイトカインが存在し、共通の病態を示唆している。
  • 炎症性サイトカインを標的とした抗炎症薬は、皮膚症状と鬱病症状の両方を軽減することが示されている。
  • 皮膚疾患と精神疾患の両方を扱う学際的なアプローチ(心理療法や薬物療法など)が重要である。
  • その他の皮膚疾患と精神疾患の関連性に関するさらなる研究が、新たな治療法の開発につながる可能性がある。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39623152

[quote_source]: Katamanin OM, Tan IJ, Barry J and Jafferany M. “Role of Inflammation and Cytokine Dysregulation in Depression in Patients with Inflammatory Skin Conditions.” American journal of clinical dermatology 26, no. 1 (2025): 35-43.

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岐阜県・岐阜市、各務ヶ原市、可児市、美濃加茂市

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SUPERVISOR
監修者情報
岩倉きぼうクリニック院長
松原 章宏
院長 松原章宏
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