岩倉きぼうクリニック

その手の甲のシミ、本当にシミですか!?

ふと見た手の甲に、いつの間にか増えている茶色いシミ。「年齢だから仕方ない」と諦めていませんか?手は人目に触れる機会が多く、年齢が出やすい部位なだけに、その悩みは深刻です。しかし、その自己判断には注意が必要かもしれません。

実は、シミだと思っていたものが治療法が全く異なる「イボ」であることは非常に多いです。また、ごく稀にですが、放置してはいけない皮膚がんのサインであったりする可能性も潜んでいます。特に直径が6mmを超えていたり、形がいびつだったりするものは要注意です。

この記事では、皮膚科専門医の視点から、ご自宅でできるシミとイボの見分け方、そして見逃してはいけない危険なサインを詳しく解説します。ご自身の状態を正しく知ることが、適切なケアへの第一歩です。

その手のシミ、本当にシミ?イボとの見分け方と危険なサイン

ふとした時に、ご自身の手の甲にできたシミが気になった経験はありませんか。

手は年齢が出やすい部位ともいわれ、人目に触れる機会も多いため、見た目の変化に悩まれる方は少なくありません。「年齢だから仕方ない」と諦めてしまう方もいらっしゃいます。

しかし、その「シミ」だと思っているものが、実はシミとは異なる「イボ」であったり、ごく稀に専門的な診断が必要な皮膚がんのサインであったりする可能性も否定できません。

まずはご自身の状態を正しく知ることが、適切なケアや治療への第一歩です。ここでは、皮膚科専門医の視点から、シミとイボの見分け方や受診を検討すべき危険なサインについて詳しく解説します。

その手のシミ、本当にシミ?イボとの見分け方と危険なサイン
その手のシミ、本当にシミ?イボとの見分け方と危険なサイン

見た目でわかる?老人性色素斑と脂漏性角化症(老人性イボ)の違い

手の甲にできる茶色い斑点の多くは、医学的には「老人性色素斑」と呼ばれる一般的なシミか、「脂漏性角化症」という良性のイボです。

この二つは見た目が似ているため混同されやすいですが、触ったときの感触や表面の状態に違いがあります。ご自身の症状と見比べてみてください。

種類 老人性色素斑(日光黒子) 脂漏性角化症(老人性イボ)
見た目の特徴 平坦で、皮膚からの盛り上がりはない わずかに盛り上がっている、または明らかな隆起がある
表面の質感 指でなぞっても引っかかりがなく、なめらか。もしくは少しカサカサしている程度 表面がザラザラ、ブツブツしており、指でなぞると凹凸を感じる
明るい茶色から濃い茶色まで様々 肌色、茶色、黒褐色など色のバリエーションが豊富
円形や楕円形が多く、周囲の皮膚との境界が比較的はっきりしている 円形や楕円形だが、いびつな形をしていることもある
発生の仕方 紫外線のダメージ蓄積により、メラニン色素が沈着してできる 老人性色素斑に、加齢による表皮細胞の増殖が加わり、盛り上がって変化することが多い

老人性色素斑は、いわゆる「シミ」の代表格です。一方で脂漏性角化症は、ウイルス性ではない良性の皮膚腫瘍で、しばしば「老人性イボ」と呼ばれます。

臨床現場では、最初は平坦なシミだったものが、年月をかけて少しずつ盛り上がり、脂漏性角化症へと変化していくケースを頻繁に目にします。

これらの見分けが重要なのは、それぞれ治療法が異なるためです。自己判断で市販のクリームなどを使用しても効果がなかったり、かえって刺激になったりすることもあるため、まずは専門医による正確な診断を受けることが大切です。

手のシミやイボができる主な原因は紫外線と加齢

手の甲にシミやイボができてしまう背景には、「紫外線」と「加齢」という二つの大きな要因が深く関わっています。

1. 紫外線によるダメージの蓄積  私たちの皮膚は紫外線を浴びると、肌の細胞核にある遺伝子(DNA)を守るために、メラノサイトという細胞が「メラニン」という色素を生成します。

 通常、このメラニンは肌のターンオーバー(新陳代謝)によって、古い角質とともに垢として自然に排出されます。しかし、長年にわたり無防備に紫外線を浴び続けると、メラノサイトが過剰にメラニンを作り出すようになります。

 さらに、ターンオーバーのサイクルも乱れ、メラニンがうまく排出されずに皮膚内部に蓄積してしまいます。この蓄積したメラニンが、シミの正体です。

 手の甲は、顔と同じように衣服で覆われることが少ない部位です。特に車の運転や自転車に乗るとき、洗濯物を干すときなど、日常生活の中で無意識に紫外線を浴び続けています。日焼け止めを塗り忘れたり、手洗いや消毒で落ちてしまったりすることも多く、ダメージが蓄積しやすいのです。

2. 加齢による肌の機能低下  年齢を重ねると、肌のターンオーバーの周期が徐々に長くなります。20代では約28日周期だったものが、40代では40日以上かかるともいわれています。

 ターンオーバーが遅れると、生成されたメラニンが排出されるまでに時間がかかり、皮膚に沈着しやすくなります。これまでの人生で浴びてきた紫外線のダメージが、加齢による肌の機能低下と相まって、シミやイボとして表面化してくるのです。

放置は危険?皮膚がん(メラノーマ)の可能性があるシミの特徴

手の甲にできるシミやイボのほとんどは良性ですが、ごく稀に悪性の皮膚がんである「メラノーマ(悪性黒色腫)」の可能性も考慮する必要があります。

メラノーマは進行が早く、転移を起こしやすい非常に悪性度の高い皮膚がんです。そのため、早期発見・早期治療が何よりも重要になります。

皮膚科専門医は、メラノーマを疑う際に「ABCDEルール」という国際的な指標を用います。ご自身のシミやほくろに当てはまるものがないか、セルフチェックをしてみてください。

【メラノーマを疑う5つのサイン(ABCDEルール)】

  • A (Asymmetry):形の非対称性
     形が左右対称ではなく、地図のようにいびつな形をしています。
  • B (Border):境界の不明瞭さ
     輪郭がギザギザしていたり、インクがにじんだようにぼやけて見えたりします。
  • C (Color):色の濃淡・むら
     色が均一ではなく、茶色や黒、青みがかった色などが混じり、色むらがあります。
  • D (Diameter):大きさ
     直径が6mmを超えているものは注意が必要です。鉛筆のお尻についている消しゴムの直径が目安になります。
  • E (Evolving / Elevation):形状や大きさの変化・隆起
     短期間で急に大きくなった、色が変化した、盛り上がってきた、出血やかゆみ、ただれが出てきたなど、何らかの変化がある場合も重要なサインです。

日本人では、手足の指や爪、足の裏に発生する「末端黒子型黒色腫」というタイプのメラノーマの割合が比較的高いことが知られています。

上記のチェックリストに一つでも当てはまる特徴があれば、決して自己判断せず、できるだけ早く皮膚科専門医を受診してください。

皮膚科で行うダーモスコピー検査とは

「このシミは良性?それとも悪性?」という患者さんの不安を解消するため、皮膚科では「ダーモスコピー検査」という非常に有用な検査を行います。

ダーモスコピー検査は、「ダーモスコープ」という特殊な拡大鏡を用いて、シミやほくろの状態を詳しく観察する検査です。

ダーモスコピー検査の特徴

  • 痛みや体への負担がない
     ダーモスコープを皮膚に軽く当てるだけなので、痛みや不快感は全くありません。小さなお子様からご高齢の方まで、どなたでも安心して受けられます。
  • 皮膚の内部構造を詳細に観察できる
     ダーモスコープは、皮膚表面での光の乱反射を抑えることで、肉眼では見えない皮膚内部の色素の分布状態や血管のパターンなどを詳細に観察できます。
  • その場で精度の高い診断が可能
     検査にかかる時間はわずか数分で、その場で診断結果をお伝えできます。皮膚を切り取って調べる生検(組織検査)とは異なり、体に傷をつける必要もありません。

この検査により、医師は色素の配列パターン(色素ネットワーク)や、点状・球状の構造、血管の形などを分析します。これにより、ただのシミなのか、イボなのか、あるいは悪性を疑うべき皮膚がんなのかを高い精度で鑑別することが可能です。

岩倉市をはじめ、北名古屋市、小牧市、一宮市、江南市など近隣にお住まいで、手のシミやイボが少しでも気になる方は、ぜひ一度当院へご相談ください。皮膚科専門医による正確な診断が、安心と適切な治療への第一歩となります。

手のシミ・イボの代表的な治療法

手の甲にできたシミやイボは、セルフケアだけでの改善が難しい場合がほとんどです。しかし、皮膚科にはこれらの症状に対応するための様々な治療法があります。

大切なのは、ご自身の症状がシミ(老人性色素斑)なのか、イボ(脂漏性角化症)なのかを正確に診断し、最適な治療法を選択することです。

治療法は、効果の現れ方、ダウンタイム、費用などがそれぞれ異なります。ここでは代表的な治療法の特徴を詳しく解説しますので、ご自身に合った方法を見つけるための参考にしてください。

手のシミ・イボの代表的な治療法
手のシミ・イボの代表的な治療法

炭酸ガスレーザー治療の効果とダウンタイム

炭酸ガスレーザーは、水分を多く含む組織に反応して熱エネルギーを発生させ、瞬間的に蒸散させる(削り取る)作用を持つレーザーです。

主に、皮膚から盛り上がっている脂漏性角化症(老人性イボ)の治療に非常に有効です。

【どのような効果が期待できるか】 この治療の最大のメリットは、隆起したイボを物理的に削り取るため、多くの場合1回の治療で除去できることです。

局所麻酔の注射を行ってから施術するため、治療中の痛みはほとんどありません。また、イボの部分だけをピンポイントで精密に削ることができ、周囲の正常な皮膚へのダメージを最小限に抑えられる点も特徴です。

【ダウンタイムと治療後の経過】 治療後の肌は非常にデリケートなため、適切なケアが仕上がりを左右します。

  • 施術直後〜数日間
     レーザーを照射した部分は、少し凹んだ状態になり、擦り傷のような赤みが出ます。ヒリヒリとした痛みが数時間続くこともあります。
  • 約1〜2週間後
     徐々にかさぶたが形成されます。このかさぶたは新しい皮膚を守る役割があるため、無理に剥がさないでください。自然に剥がれ落ちると、下からピンク色の新しい皮膚が現れます。
  • 数ヶ月間
     新しい皮膚は紫外線や摩擦の刺激に非常に弱いです。この期間に紫外線対策を怠ると、炎症後色素沈着という「戻りジミ」が生じるリスクが高まります。肌の色が完全に周囲と馴染むまでには、3ヶ月から半年ほど、長いと1年ほどかかるのが一般的です。
メリット デメリット
盛り上がりのあるイボに高い効果が期待できる 約1〜2週間のダウンタイム(テープ保護が必要)がある
1回の治療で除去できることが多い 炎症後色素沈着のリスクがあり、紫外線対策が必須
治療時間が比較的短い 自費診療となる

Qスイッチレーザー治療の効果とダウンタイム

Qスイッチレーザーは、ナノ秒(10億分の1秒)という非常に短い時間で高いエネルギーを照射できるレーザーです。

このレーザー光は、皮膚の正常な組織にはほとんどダメージを与えず、シミの原因であるメラニン色素のみを選択的に破壊する特性があります。

主に、老人性色素斑(日光黒子)のような平坦な茶色いシミの治療に用いられます。

【どのような効果が期待できるか】 レーザーのエネルギーによって粉々に破壊されたメラニン色素は、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)の過程で、マクロファージという免疫細胞に貪食され、体外へ排出されます。

そのため、施術直後にシミが消えるわけではありません。数週間から数ヶ月かけて、徐々にシミが薄くなっていくのを実感できます。

【ダウンタイムと治療後の経過】 炭酸ガスレーザーに比べて皮膚表面へのダメージが少ないため、ダウンタイムが短いのが特徴です。

  • 施術直後
     照射した部分が少し赤くなったり、ヒリヒリとした軽い痛みを感じたりすることがあります。
  • 数日後〜10日後
     シミの色が一時的に濃くなり、薄い膜のようなかさぶたができます。このかさぶたは1週間〜10日ほどで自然に剥がれ落ちます。
  • 治療後
     施術当日から保護テープの上からメイクをすることも可能です。痛みは「輪ゴムでパチンと弾かれる程度」と表現されますが、痛みがご心配な方には麻酔クリームを使用することもできますのでご安心ください。

液体窒素による凍結療法の痛みと治療後の経過

液体窒素による凍結療法は、マイナス196℃の超低温の液体窒素を綿棒などに含ませ、病変部に直接当てて凍結させる治療法です。

この治療は、異常な細胞を低温で壊死させ、皮膚の自己再生能力を利用して剥がれ落とすことを目的とします。主に脂漏性角化症やウイルス性のイボの治療に用いられ、保険が適用されます。

【痛みと治療後の経過】 施術中は、ピリピリとした鋭い痛みを伴います。この痛みは、軽い火傷のような状態で、施術後も数時間から半日ほど続くことがあります。

  • 施術当日〜数日後
     治療した部位が赤く腫れ、場合によっては水ぶくれができます。この水ぶくれは治療が効いている証拠でもありますが、無理に潰すと細菌感染のリスクがあるため、触らずに自然に吸収されるのを待つか、医師の指示に従ってください。
  • 1〜2週間後
     次第にかさぶたとなり、自然に剥がれ落ちます。
  • 治療間隔
     1回の治療で取りきれないことも多く、完全に除去できるまで2週間〜1ヶ月に1回のペースで複数回の治療が必要になるのが一般的です。

レーザー治療と比べて、病変の深さを精密にコントロールすることが難しいため、色素沈着(シミが残る)や色素脱失(白く色が抜ける)といった跡が残るリスクが高いです。

外用薬(塗り薬)による治療の効果と限界

レーザー治療のような物理的な処置に抵抗がある方や、広範囲に散らばる薄いシミに対しては、外用薬(塗り薬)による治療も選択肢となりえますが、なかなか難しいことも多いです。

主に、メラニンの生成を抑制する薬と、排出を促進する薬を組み合わせて使用します。

  • ハイドロキノン
     メラニン色素を作る「チロシナーゼ」という酵素の働きを阻害します。これにより、新しいシミができるのを防ぐ効果が期待できます。「肌の漂白剤」とも呼ばれます。
  • トレチノイン(ビタミンA誘導体)
     皮膚のターンオーバーを強力に促進し、表皮に蓄積したメラニン色素を垢として排出させる働きがあります。

【効果と限界】 これらの外用薬を医師の指導のもとで継続的に使用することで、今あるシミを薄くし、新たなシミを予防する効果が期待できます。

しかし、効果を実感するまでには最低でも3ヶ月以上の期間が必要であり、根気強く治療を続ける必要があります。

また、トレチノインの使用初期には、赤みや皮むけ、ヒリヒリ感といった「ビタミンA反応」と呼ばれる副作用が伴うことがほとんどです。これは治療が効いているサインでもありますが、医師による適切な濃度の調整が不可欠です。

重要な点として、これらの外用薬は平坦なシミには有効ですが、盛り上がりのある脂漏性角化症に対しては効果がありません。

内服薬(飲み薬)による治療の効果と限界

手のシミの治療として、飲み薬の治療を行っている方も多くいらっしゃしますが、なかなか単独での治療は難しいのではないかと感じています。

レーザー治療のような直接的なアプローチのサポートという位置づけで考えるとよいでしょう。

【主な内服薬の種類と効果】

  • トラネキサム酸
     メラノサイトを活性化させる情報伝達物質「プラスミン」の働きをブロックし、メラニンの生成を初期段階で抑制します。特に肝斑の治療で中心的な役割を果たす薬です。
  • ビタミンC(アスコルビン酸)
     メラニン色素の生成を抑える作用と、できてしまった黒色メラニンを還元(色を薄くする)する作用があります。抗酸化作用で、肌の老化を防ぎます。

【限界】 これらの内服薬は、あくまでシミ治療の補助的な役割です。飲み薬だけで今あるシミやイボを完全に消し去ることは困難です。

保険適用と自費診療の治療費の目安

手のシミやイボの治療費は、その症状が「病気」と診断されるか、「美容目的」と判断されるかによって大きく異なります。

【保険適用の治療】 医師が診察し、脂漏性角化症(老人性イボ)やウイルス性イボなど、医学的な疾患として診断された場合の治療が対象です。

  • 主な治療法
     液体窒素による凍結療法、手術による切除など
  • 費用の目安
     3割負担の方で、1回あたり1,000円〜3,000円程度が目安です(別途、診察料や薬剤費がかかります)。

【自費診療の治療】 老人性色素斑(日光黒子)のように、健康上の問題はないものの、見た目を改善したいという美容目的の治療が対象です。

  • 主な治療法
     レーザー治療(Qスイッチ、炭酸ガス)、外用薬など
  • 費用の目安
     費用は全額自己負担となり、クリニックによって料金が異なります。
治療法 費用の目安(自費診療)
Qスイッチレーザー 1cm四方あたり 10,000円〜15,000円
炭酸ガスレーザー 5mmあたり 5,000円〜10,000円
外用薬(ハイドロキノンなど) 1本 2,000円〜5,000円

ご自身の症状がどちらに該当し、どの治療が最適かを判断するためにも、まずは一度、専門医の診察を受けることをお勧めします。

治療後に跡が残らないためのアフターケア

レーザー治療や液体窒素療法は、シミやイボを取り除くための非常に有効な手段ですが、治療効果を最大限に引き出し、跡を残さずきれいに治すためにはアフターケアが極めて重要です。

治療後の肌は、バリア機能が一時的に低下し、外部からの刺激に非常に敏感な状態になっています。この時期のケアを怠ると、色素沈着などのトラブルにつながる可能性があります。

【アフターケアで最も重要な3つのポイント】

  1. 徹底した紫外線対策
     治療後の肌に紫外線が当たることは、炎症後色素沈着(戻りジミ)を引き起こす最大の原因です。季節や天候、屋内外を問わず、毎日必ず日焼け止めを使用してください。SPF30・PA++以上を目安に、2〜3時間おきにこまめに塗り直すことが理想的です。
  2. 十分な保湿
     肌が乾燥すると、バリア機能が低下し、ターンオーバーのサイクルが乱れやすくなります。肌の再生をスムーズに促すためにも、低刺激性の化粧水やクリームでしっかりと保湿し、潤いを保つことが大切です。
  3. 摩擦・刺激を避ける
     治療後にできたかさぶたを気になって触ったり、無理に剥がしたりするのはやめてください。かさぶたは、新しい皮膚を守る「自然の絆創膏」の役割をしています。洗顔や着替えの際も、ゴシゴシこすらず優しく扱うことを心がけましょう。

もし治療後に強い赤みや痛み、かゆみなど気になる症状が現れた場合は、自己判断せずに速やかにクリニックにご相談ください。

手のシミやイボのお悩みは、適切な診断と治療で改善が期待できます。当院は岩倉市にあり、北名古屋市、小牧市、一宮市、江南市からもアクセスしやすい皮膚科・美容皮膚科です。シミ治療にも力を入れておりますので、お一人で悩まず、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

シミを増やさない!今日からできる予防とセルフケア3つの習慣

レーザー治療などで一度きれいになった手肌を見ると、嬉しい気持ちになりますよね。 しかし、治療はあくまでシミをリセットする手段であり、ゴールではありません。

治療後も以前と同じ生活習慣を続けていては、再び紫外線ダメージが蓄積し、新たなシミが生まれてしまう可能性があります。 大切なのは、治療後のきれいな状態を維持し、未来のシミを「作らせない」ことです。

ここでは皮膚科専門医の視点から、今日からすぐに実践できる予防とセルフケアの3つの習慣を詳しく解説します。 毎日の少しの心がけが、5年後、10年後の若々しい手肌を育む土台となります。

シミを増やさない!今日からできる予防とセルフケア3つの習慣
シミを増やさない!今日からできる予防とセルフケア3つの習慣

紫外線対策が最も重要!日焼け止めの正しい選び方と塗り方

手のシミができる最大の原因は、長年にわたり浴び続けてきた紫外線です。 この紫外線による肌の老化は「光老化」と呼ばれ、自然な加齢による老化とは区別されます。

つまり、紫外線対策を徹底することは、シミ予防において最も効果的な手段なのです。 季節や天候に関わらず、一年を通して日焼け止めを塗ることを習慣にしましょう。

【シーンに合わせた日焼け止めの選び方】 日焼け止めに記載されている「SPF」と「PA」は、防御できる紫外線の種類を示します。

  • SPF (Sun Protection Factor)
     肌に赤みや炎症を起こさせ、シミの直接的な原因となる紫外線B波(UVB)を防ぐ効果の指標です。数値が大きいほど効果が高まります。
  • PA (Protection Grade of UVA)
     肌の奥深く(真皮)まで届き、シワやたるみの原因となる紫外線A波(UVA)を防ぐ効果の指標です。「+」の数が多いほど効果が高まります。

これらの指標を参考に、生活シーンに合わせて日焼け止めを使い分けるのが賢い方法です。

シーン SPFの目安 PAの目安
日常生活(通勤・買い物など) SPF20~30 PA++~+++
屋外での軽い活動(スポーツ、レジャー) SPF30~50 PA+++~++++
炎天下での活動(海水浴など) SPF50+ PA++++

手は汗や水、手洗い、アルコール消毒などで日焼け止めが落ちやすい部位です。 そのため、耐水性の高い「ウォータープルーフ」タイプの製品を選ぶと良いでしょう。

【効果を最大限に引き出す正しい塗り方】 せっかく日焼け止めを塗っても、量や塗り方が不適切では十分な効果を得られません。

  1. 十分な量を使用する
     使用量が少ないと、製品に表示されている効果を発揮できません。片方の手の甲に対して、パール粒1個分(約0.5g)を目安に、十分な量を使いましょう。
  2. ムラなく丁寧に塗る
     指の間や関節のシワ、爪の周り、手首などは塗り忘れが多い箇所です。これらの細かい部分まで、意識して丁寧に塗り広げてください。
  3. こまめな塗り直しを徹底する
     日焼け止めの効果は永続的ではありません。2〜3時間おきに塗り直すのが理想です。特に、手を洗った後や消毒液を使った後は、その都度塗り直すことを習慣にしましょう。

日焼け止めと合わせて、移動時にはUVカット機能のある手袋やアームカバー、日傘などを活用すると、さらに効果的に紫外線を防ぐことができます。

老け手に見せないためのハンドケアと保湿のコツ

乾燥して潤いを失った肌は、角層のバリア機能が低下しています。 バリア機能が低下すると、外部からの刺激を受けやすくなり、紫外線の影響も深刻化します。

また、肌の生まれ変わりであるターンオーバーのサイクルも乱れがちになります。 その結果、生成されたメラニンがスムーズに排出されず、シミとして定着しやすくなるのです。

ふっくらと潤いに満ちた手肌を保つことは、シミ予防の観点からも非常に重要です。

【効果的なハンドケアのポイント】

  • 保湿のタイミングを逃さない
     手を洗った直後は、肌の水分が蒸発しやすい状態です。タオルで優しく水気を拭き取ったら、間髪入れずにハンドクリームで保湿しましょう。水仕事の後や就寝前も、こまめに塗る習慣をつけることが大切です。
  • 目的に合ったハンドクリームを選ぶ
     保湿を重視するなら、「セラミド」「ヒアルロン酸」「ワセリン」などの高保湿成分が配合されたものが適しています。シミ予防を意識するなら、メラニンの生成を抑える「ビタミンC誘導体」「ナイアシンアミド」「トラネキサム酸」などの有効成分が配合された薬用ハンドクリームを選ぶのも良い選択です。
  • 血行を促進する塗り方を意識する
     ハンドクリームを手のひらで少し温めてから塗ると、肌へのなじみが良くなります。指先から手首に向かって、一本一本の指を優しくマッサージするように塗り込みましょう。血行が促進され、肌のすみずみまで栄養が行き渡りやすくなります。

特に乾燥が気になる夜は、化粧水で水分を補給した後にハンドクリームをたっぷり塗り、綿の手袋をして眠る「集中ハンドパック」もおすすめです。

市販のシミ消しクリームや美白化粧品で効果はある?

ドラッグストアなどでは、シミ対策をうたった多くの市販品が販売されています。 これらの製品をセルフケアに取り入れる方も多いでしょう。

市販の美白化粧品は、その役割と限界を正しく理解して使用することが重要です。

【市販品に期待できる「予防」効果】 「医薬部部外品」や「薬用」と表示されている美白化粧品には、厚生労働省が効果を認めた「美白有効成分」が一定の濃度で配合されています。

これらの成分の主な働きは、シミの原因であるメラニンが過剰に作られるのを抑えることです。 つまり、これからできる新たなシミを「予防」し、ごく初期段階の薄いシミを目立たなくする効果が期待できます。

【市販品の限界と医療機関との違い】 市販の化粧品は、あくまで肌の健康を保ち、シミを予防するためのものです。 そのため、医療機関での治療とは異なり、以下のような効果は期待できません。

  • 長年かけて定着した濃いシミ(老人性色素斑)を消すこと
  • 皮膚が盛り上がったイボ(脂漏性角化症)をなくすこと
  • 皮膚の深い層(真皮)に落ちてしまった色素を消すこと

これらの症状を改善するためには、メラニン色素を直接破壊するレーザー治療や、イボを物理的に除去する炭酸ガスレーザー治療など、専門的なアプローチが必要です。

セルフケアを続けても改善が見られない場合や、ご自身の症状がシミなのかイボなのか判断がつかない場合は、自己判断でケアを続けることは時間と費用の浪費につながる可能性があります。

岩倉市をはじめ、北名古屋市、小牧市、一宮市、江南市など近隣にお住まいで、手のシミにお悩みの方は、ぜひ一度当院へご相談ください。皮膚科専門医による正確な診断と、一人ひとりの肌状態に合わせた最適な予防法・治療法をご提案いたします。

まとめ

今回は、手の甲のシミやイボについて、その見分け方から治療法、日々のケアまで詳しくご紹介しました。
ご自身ではただの「シミ」だと思っていても、実は治療法が異なる「イボ」であったり、ごく稀に専門的な診断が必要なケースもあります。

「年齢だから仕方ない」と諦めていたそのお悩みも、皮膚科での適切な診断と治療で改善が期待できます。レーザー治療や塗り薬など、症状に合わせた様々な選択肢がありますので、ご安心ください。

まずはご自身の症状を正しく知ることが、美しく若々しい手肌への第一歩です。気になるシミやイボがあれば、自己判断で悩まずに、ぜひ一度お気軽に皮膚科専門医へご相談ください。

・追加情報

タイトル: Seborrheic keratosis
脂漏性角化症

概要:

  • 脂漏性角化症(SK)は、臨床皮膚科診療において最も一般的な良性表皮腫瘍である。
  • 本レビューは、SKの臨床的・組織学的所見、疫学、病因、および治療に関する現在の知見をまとめている。
  • SKには、臨床像と組織所見に基づいた異なるサブタイプが存在する。
  • 加齢、遺伝的素因、紫外線曝露などがSKの発症に寄与すると考えられている。
  • 病変は手掌と足底を除く全身に発生するが、顔面と上体幹が最も一般的である。
  • 診断は通常臨床的に行われ、ダーモスコピーや組織検査も用いられる場合がある。
  • 多くの患者は医学的適応がない場合でも、美容上の理由から病変の除去を希望する。
  • 治療選択肢には、外科的治療、レーザー治療、電気焼灼、凍結療法があり、局所薬物療法は現在開発中である。
  • 治療は臨床像と患者の希望に応じて個別化されるべきである。

要点:

  • 脂漏性角化症(SK)は、臨床で最も一般的な良性表皮腫瘍であり、加齢、遺伝、紫外線曝露が発症要因とされる。
  • SKは多様なサブタイプを持ち、全身に発生し得るが、特に顔面と上体幹に好発する。
  • 診断は主に臨床的だが、ダーモスコピーや組織検査も補助的に利用される。
  • 治療は主に美容目的で行われ、外科的切除、レーザー、電気焼灼、凍結療法など多様な選択肢があり、個別化されたアプローチが重要である。
  • 新しい治療法として局所薬物療法が開発段階にある。

[quote_source]: Barthelmann S, Butsch F, Lang BM, Stege H, Großmann B, Schepler H, Grabbe S. Seborrheic keratosis. J Dtsch Dermatol Ges. 2023 Mar;21(3):265-277. doi: 10.1111/ddg.14984. Epub 2023 Mar 9. PMID: 36892019.

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